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蕎麦の基礎知識

世界中で広く栽培される「そば」

古くから世界各地で栽培される作物、そば。日本語では「蕎麦」中国語では「荞麦」、英語では「buckwheat」と表記します。分類上では麦と同じイネ科ではなく、タデ科に属しますが、いずれも麦の一種であるという表記は、世界で最も生産量が多い小麦と同様に、そばが重要な穀物だという認識に基づいています。

一方で、そばを日本のような麺に加工して食す地域は多くなく、広く親しまれているのは「そば粥」料理で、ヨーロッパ各国では日常的な料理の一つ。そばを深く知ることで、より豊かな食や文化の体験につながるかもしれません。ここではそばをより楽しむための、基礎知識やヒントをご紹介します。

日本におけるそばの歴史と「麺」の誕生

5000年前の縄文時代には作られていたとされるそばは、2300年前の弥生時代からの稲と比較してもはるかに長い歴史を持ち、日本人の食生活と深く関わってきました。 そばの実は硬く、道具もない時代は食物として認知されていませんでしたが、鎌倉時代には中国から伝わった石臼により製粉が可能となり、そば粉を団子や餅のようにして食べる「そばがき」や、水で溶いたそば粉を焼いて食べる「そば焼き」などが現れました。

室町時代に入ると、小麦をつなぎにすることで製麺ができるようになり、これをそばがきと区別して「そば切り」、略して現在と同じく「そば」となります。 江戸時代には料理本にそば切りの作り方が掲載され、一気に庶民にも広がり日常的な食物として定着していきました。江戸時代末期には江戸中の蕎麦屋は4000件近くとなり、現在の東京の蕎麦屋店(約3200店)よりも多かったとされています。

言わずと知れたスーパーフード

米やうどんと違い、精製せず製粉されるそばは栄養価が高いのが特徴です。 そば粉は小麦粉や白米と比べると、ビタミnB1・B2といったビタミン群やミネラル、ポリフェノールの一種であるルチン、そして良質なタンパク質などが豊富に含まれています。 また、そばは炭水化物が分解され糖に変わるまでのスピードが緩やかなため、血糖値が上昇しにくく、ダイエットや糖尿病対策にも効果的です。 しかし販売される多くのそばにはつなぎで小麦が含まれているため、より高い効果を期待するのであれば、そば粉100%の「十割そば」を選ぶのが良いでしょう。小麦不使用のため、グルテンフリーの観点からもおすすめです。

信州の気候と生育環境

日本で販売されるそばの8割は輸入であり、国産のそばは貴重な存在です。 国産そばの有力な産地としては、長野や福井、茨城、富山、北海道などが挙げられ、各地域の強みを生かしたそれぞれ違う味わいが楽しめます。 中でも長野の信州そばは、昼夜の寒暖差の大きさと水捌けの良い土地がそばの栽培に適しており、そば作りに欠かせない水も美しく、良質です。 出来上がったそばは、色鮮やかで香り高いことが特徴です。ぜひご堪能ください。